「選択的夫婦別姓制度」の社会的機運への思考実験

  「選択的夫婦別姓」というものに対する一般社会での機運は年々増大している。


昨今の多様性を貴ぶ価値観において、女性の社会的進出を阻害する要因として度々問題視されるのが、「姓」の問題、特に婚姻後において、主に配偶者である夫の姓に改姓する事による、それまで積み上げてきた旧姓でのキャリアの喪失、およびアイデンティティの喪失という観点において、女性の社会的権利の拡大を図る上では避けては通れない問題となっている。

そこで、「選択的夫婦別姓制度」という制度概念により、おもに女性の社会活動の利便を拡大する機運が高まり、有識者、政界、財界を巻き込んだ論争が未だ解決には至っていない。

厄介なのが、この「姓」を扱う問題において、「個人の権利・アイデンティティ」と「文化と伝統」の衝突が、賛成派と反対派との感情的障壁となっていることである。

多様化社会の趨勢において、「夫婦別姓」もしくは「選択的夫婦別姓」を用いる諸外国の例を論ずるまでもなく、選択的夫婦別姓制度に賛成する人の割合が増加傾向にあるのはもはや否定するまでもない。

賛成派は主に、個人の尊重や多様性の尊重などを主張しており、反対派は主に、家族の一体感の喪失や、伝統的な家族観の変化などを懸念しているのが実情である。

そこで「旧姓使用の拡大」を建設的対案とする向きもあり、多くの公的手続き上において、通称使用を可能とする法整備は進んではいるが、賛成派が強く主張する所はやはり「個人のアイデンティティ」によるものが大きいと思われる。

個人を認識する上での「姓名」の捉え方において、戸籍制度に由来する日本の価値観と諸外国とでは異なる。

西洋社会における姓名とアイデンティティの関係性について、西洋社会では、姓名は個人の識別において重要な役割を果たし、政府機関、金融機関、医療機関など、様々な場面で姓名が本人確認の手段として用いられる。

西欧社会では伝統的に、姓(ファミリーネーム)は家族の象徴として受け継がれてきたが、、近年では、個人の多様性を尊重する考え方が広まり、姓に対する捉え方も変化している。

一部の個人は、姓名やミドルネームを変更することで、自己表現やアイデンティティの再構築を図ることも珍しくはなくなり、特に、トランスジェンダーの人々にとっては、姓名の変更は重要な意味を持ちうる。

姓名の由来や意味は、各国の文化や歴史によって当然異なり、例えば、一部の国では、姓名に職業や出身地が反映される事がある。

姓の選択においての考え方では、多くの西洋諸国では、結婚時に夫婦が同姓にするか別姓にするかを自由に選択でき、また、子供の姓も両親が協議して決定することが一般的である。

また、姓名の変更においても、日本よりも比較的容易に行える国は多い。

そして、姓名の持つ意味合いにおいて、日本の様に、姓名に家制度、戸籍制度が深く関わる国は珍しく、姓名はより個人的な意味合いを持つ傾向がある。

西洋社会でも、姓名とアイデンティティの関係については様々な議論がある。

一部のフェミニストは、結婚による女性の姓の変更は、女性の従属的な立場を示すものであると主張する。

多文化社会においては、移民やマイノリティの姓名が社会で適切に扱われるかどうかが、アイデンティティの尊重という観点から重要な課題となっている。

西洋社会における「個人のアイデンティティ」を「姓名」に依る考え方は、日本の文化とは異なる側面を持ちながらも、個人の識別、家族の象徴、自己表現など、様々な意味合いを持っているというのが実情のようだ。

日本の「姓名」の捉え方の根本である、「戸籍制度」について簡単に振り返ってみよう。


家樹株式会社」様の「家系図の森」コーナー、

2017.10.24の記事「戸籍制度の歴史とは?いつから始まったものなのか。

を恐れながら拝借し、歴史を振り返ってみることにしたい。


最も古い戸籍は、日本書紀(日本最古の歴史書)に記録があるとの事らしい。

それは「名籍(なのふだ)」とも呼ばれ、6世紀中頃、現在の戸籍のような全ての人を対象としたものではなく、当時は渡来人(海外からわたってきた人)等の記録をするための対象とした限定的なものだったとの事。

全ての人民を対象とするような制度ではなかった為、今の日本の戸籍制度とは相当異なるものではあるが、この記事にもある通り、戸籍にも想像以上に古い歴史があった事が理解できる。

日本の戸籍制度は、飛鳥時代から明治時代まで、さまざまな時期に整備されてきており、

645年に「大化の改新」で戸籍制度が制度化された。

天智天皇9年(670年)に「庚午年籍(こうごねんじゃく)」と呼ばれる制度が作られ、この庚午年籍が最初の戸籍と考えられているとの事である。

そして、持統天皇4年(690年)の飛鳥浄御原令に基づく庚寅年籍が、全国的規模で実施された最初の戸籍と考えられているとの事だ。

中世において、公家や武士を中心に「名字」も広まっていったこともあり、時の為政者が配下、そして人民を統制する必要上において、戸籍の原型とも呼べるものは姿かたちを変え、存在したのだろうと推察する。

天下太平の世、徳川幕府為政下においては、「宗門人別改帳」という村・町ごとに作成された民衆調査の台帳や、寺社の作成した「過去帳」が現在でいう戸籍制度の役割を果たすようになり、武士階級については「分限帳」と呼ばれる武士の名簿のようなものが藩ごとに作られたそうだ。

その中で「過去帳」は注目に値する。現在にもある各宗派の形式に則った故人の戒名と没年月日の記述による、一種の家族単位のルーツ的なものが、家系図のような作法形式に捉われない自在な記録媒体になり得たのだと考える。

時は流れ、明治4年(1871年)に戸籍法が制定され、全国的に戸籍作成に関する規則が統一され、明治5年(1872年)に「壬申戸籍(じんしんこせき)」が施行され、全国統一された様式の戸籍が初めて作成される。

戦前の戸籍は「家制度」の考え方の下、「家」を基本単位とし、「戸主」と呼ばれる家の家督を継いだ一家の責任者の役割(戸主権)が存在し、その家の長男が、家や相続財産を継ぐという慣習が形成されたようだ。

その後、第二次世界大戦が勃発し、日本は敗戦。

戦後はGHQの占領政策のもと、日本の戸籍制度も岐路を迎えることになる。

昭和23年に、新しい戸籍法が施行された。

この戸籍法では、戦前が「家」を基本単位としていたのに対して、夫婦とその子供(2世代)が基本単位とされる事になった。

つまり「家制度」が廃止され、親子単位の登録に変更になり、「戸主」は特段の権利をもたない「筆頭者」に置き換わり、ようやくここで現在の戸籍制度が確立した事になる。

このような複雑な歴史的文化的背景が日本に根付いているからこそ、この度の「選択的夫婦別姓制度」の各人の捉え方が多種多様足りえるのだろう。

最大の懸念点があるとすれば、夫婦間の姓の揺らぎにおける、子の権利とアイデンティティの保護の態様であろう。

両親の間で姓の分離が為され、その場合において精神的にも社会的にも脆弱である子の意思、いわゆる個人の意思の発揚と権利は保証されうるのか、という疑義が生じる場合、果たして法的に子を一個人として保護しなければならない事を念頭に置き、この問題を捉えなければならない。

少々乱暴な物言いをすれば、親側の「勝手」を子に押し付けるかの様な法整備であってはならない、という事だ。

そこで、補完的思考として、例えば、子が成人年齢に達するまでは「戸籍上の姓」を使用し、成人年齢に達し、契約責任が担保でき得る状態になったとき、両親のどちらかの姓の選択を可能とする様にすれば良いのではないだろうか。

その場合の考えられる制度設計としては、


出生時における子の姓は、「戸籍上の姓」に基づき決定し、戸籍には、出生時の姓(=「戸籍上の姓」)と、父母それぞれの姓を記録する。

子が成年(18歳)に達した際に、子の意思で、父母いずれかの姓を選択する権利を与え、子による選択があった場合には、「戸籍上の姓」を修正するものとする。

選択的夫婦別姓制度における子の姓の選択について、成年時に子自身が姓を選択できる制度設計は、理論的には可能と考える。

但しこの方式を採用する上での課題として、

現行の戸籍制度では、家族単位で姓を記録するため、子の成年時の姓の選択をどのように戸籍に反映させるかという点において、戸籍システムの改修が必要になる可能性がある事。

その際、銀行口座、運転免許証、パスポートなど、様々な社会制度で戸籍情報が利用されており、成年時の姓の選択が、これらの制度にどのような影響を与えるかを検討する必要がある事。

子の成年時の姓の選択が、親族関係や相続などにどのような影響を与えるかを検討する必要がある事。

成年時の姓の選択を導入する事は、制度を複雑化させる可能性があり、制度の透明性、および一般国民が理解し易い制度設計が求められる事。

が想定される。


そこで、更に制度を補強する意図において、戸籍制度を維持しつつ、「戸籍上の姓」と「社会生活上の姓」を二重に運用する法的制度を提案する。

これは、選択的夫婦別姓制度の代替案としての一考に耐え得るものと期待する。

この制度は、現状の戸籍制度を大きく変更することなく、個人の姓の選択の自由をある程度尊重できる可能性があり得る。

では、この制度の概要を簡単に説明する。

まず基本的には、現行の民法に基づき、夫婦は同姓を名乗り、戸籍には、夫婦の同姓と、それぞれの旧姓を記録する。

この夫婦の名乗る同姓を「戸籍上の姓」と仮に定義する。

各個人は、社会生活において、「戸籍上の姓」または旧姓を自由に選択出来るものとする。

これを「社会生活上の姓」と仮に定義する。

公的な書類や契約においても、一定の範囲で旧姓(「社会生活上の姓」)の使用を認め、マイナンバーカードや運転免許証などに、「戸籍上の姓」と旧姓(「社会生活上の姓」)を併記するものとする。

これによるメリットとしては、現行の戸籍制度を大きく変更する必要がない為、制度移行に伴う混乱を最小限に抑える事が期待できる。

社会生活において、個人の意思で姓を選択できるため、キャリアの中断やアイデンティティの喪失を防ぐ事が可能となる。

戸籍上の姓は維持される為、社会保障、税制、相続などの社会制度との整合性を保ちやすい。

旧姓の併記や、一定範囲内での公的書類への旧姓使用を認めることで、海外ビジネスシーンでの不都合へ対応できる可能性がある。

また、デメリットとしては、

「戸籍上の姓」と「社会生活上の姓」の二重運用は、制度を複雑化させる可能性があり、これを広く国民が理解し、適切に利用する為の丁寧な情報提供が必要となる事。

社会生活において、戸籍上の姓と異なる姓を使用することに、社会的な違和感や混乱が生じる可能性があり得る事。

法的文書や契約書などにおいて、「戸籍上の姓」と「社会生活上の姓」のどちらを優先するのか、という問題が発生する可能性は否定できない事。

がある。

「戸籍上の姓」と「社会生活上の姓」の二重運用は、選択的夫婦別姓制度の代替案として、今後の議論において検討されるべき選択肢の一つとなり得るものと期待するが、さらに私が思考材料として提案するものとして、精神性の分野においての「言霊思想」における「名前を秘匿する」文化を例に挙げたい。


「名前を秘匿する文化」は、世界中の様々な文化や歴史の中で見られる現象であり、その背景には、以下のような多様な理由が存在するとされる。


1. 言霊思想と呪術的な意味合い

古代社会では、名前には霊的な力が宿ると考えられており、その為、名前を軽々しく口にする事は、その力に影響を与え、災いを招くと信じられていた。

特に、神や精霊、敵対する部族などの名前は、その力を恐れて秘匿されることがあったという。

また、個人名も、呪術的な目的で秘匿されたり、特定の儀式でのみ使用されたりする事がある。


2. 身分や階級の象徴

一部の文化では、高貴な身分の人々は、一般の人々と区別する為に、名前を秘匿したり、特別な名前を用いたりした。

例えば、古代エジプトのファラオや、日本の天皇などは、その神聖性を示す為に、即位後に特別な名前を名乗る事があった。


3. プライバシーの保護

現代社会においても、プライバシー保護の観点から、名前を秘匿する文化が散見される。

例えば、匿名掲示板やSNSなどでは、個人情報保護の為に、匿名やニックネームが使用され、また、犯罪被害者や証人などは、安全確保の為に、名前を秘匿される事がある。


4. 宗教的な理由

一部の宗教では、神の名を軽々しく口にする事を禁じたり、特定の宗教的な儀式でのみ神の名を唱える。

例えば、ユダヤ教では、神の名「Y.H.W.H.」は、神聖な名前として、特別な場合を除いて発音される事はない。


5. 文化的なタブー


一部の文化では、死者の名前を口にする事をタブー視する習慣がある。

これは、死者の霊を恐れたり、死者を悼む気持ちを表したりする為と考えられる。


現代社会では、インターネットの普及に伴い、匿名性が高まり、名前を秘匿する事が容易になったが、匿名性が高まる事で、誹謗中傷やなりすましなどの問題も発生している。

名前を秘匿する文化は、その背景にある思想や価値観、まさに多様化社会の理念に適う一態様である。

また、秘匿性情報の一つとして、「本籍地」があるが、本籍地が表示される場面は限定的であり、表示される公的文書の例としては、戸籍謄本・抄本(戸籍に関する証明書であり、本籍地が必ず記載される)があり、身分関係(出生、婚姻、死亡など)を証明する為に使用される。

また、住民票(住民の居住関係を証明する書類だが、本籍地の記載も可能)は、住民票の写しを提出する際に、本籍地の記載が必要な場合がある。

そして、運転免許証のICチップには、本籍地の情報が記録されている事は周知の事実である(ただし、運転免許証の表面には本籍地は記載されない)。

パスポートも同様で、パスポートのICチップにも本籍地の情報が記録されている(ただし、パスポートの表面には本籍地は記載されない)。

これらの公的文書は、身分証明や各種手続きなどで必要となる場合があり、本籍地を知らせる必要がある場面は、主に以下のようなケースが考えられる。

・戸籍に関する手続きでは、婚姻届、離婚届、出生届、死亡届など、戸籍に関する届出を行う際に、本籍地の記載が必要。

・戸籍謄本・抄本を取得する際にも、本籍地の情報が必要。

・特定の資格取得や手続きにも用いられ、一部の国家資格や公的な手続きにおいて、本人確認のために本籍地の記載が求められることがある。

・相続手続きにおいて、被相続人の戸籍謄本を取得する必要があり、その際に本籍地を確認する必要がある。

・過去には、運転免許証の申請時にも本籍地の記載が必要であったが、現在は記載不要となっている。

・以前は、履歴書に本籍地を記載する場合もあったが、現在では個人情報保護の観点から記載しない事が一般的である。

この様に本籍地は、個人の身分関係を証明する重要な情報である為、厳重な管理が必要である。

上述の本籍地を知らせる凡例に準じ、「戸籍上の姓」を特定の法的文書にのみ運用するものとし、他の一般契約上の法的文書においては「社会生活上の姓」を利用するように法制度をすることは可能なのかを考えてみよう。


【法制度設計の考え方】

「戸籍上の姓」の限定的な運用:

「戸籍上の姓」は、戸籍謄本・抄本、特定の国家資格の申請、相続手続きなど、法律で定められた特定の場面でのみ使用を義務付けるものとする。

これらの場面では、本人確認の厳格性が求められる為、戸籍上の姓の使用を必須とする。

「社会生活上の姓」の広範な利用:

銀行口座、クレジットカード、運転免許証、パスポート、各種契約など、日常生活や社会生活における殆どの場面で、「社会生活上の姓」の利用を認めるものとする。

「社会生活上の姓」は、公的な身分証明書に記載し、公的に証明できるものとする。

戸籍との紐付け:

「戸籍上の姓」と「社会生活上の姓」は、マイナンバーなどを活用して紐付け、必要に応じて同一人物であることを証明できるようにする。

これにより、「社会生活上の姓」を使用する場合でも、法的文書との整合性を保つことができ得る。

メリット:

・個人の姓の選択の自由を尊重しつつ、戸籍制度の根幹を維持でき得る。

・日常生活や社会生活における姓の変更に伴う煩雑な手続きを軽減する事が期待できる。

・海外とのビジネスシーンにおいて、旧姓の使用を容易にすることで、国際的な活動を円滑にする事ができる。

デメリット:

・「戸籍上の姓」と「社会生活上の姓」の二重運用は、制度を複雑化させ、国民の理解を得るのが難しい可能性がある。

・法的文書や契約書などにおいて、どちらの姓を優先するのか、という問題が発生する可能性がある。

・「社会生活上の姓」の公的な証明方法や、戸籍情報との紐付け方法など、技術的な課題も現時点において存在する。

制度設計の際の検討事項:

「戸籍上の姓」の使用を義務付ける法的文書の範囲を明確に定義する必要がある。

「社会生活上の姓」の公的な証明方法や、戸籍情報との紐付け方法について、技術的な検討が必要である。

また、法的文書や契約書における姓の扱いについて、法的専門家による検討が必要である。

そして、国民への情報提供と制度の周知について、丁寧な広報活動が必要である事が大切である。

この制度設計は、選択的夫婦別姓制度の代替案として、今後の議論において検討されるべき選択肢の一つとなり得るものと期待する。

上述の「社会生活上の姓」の公的な証明方法や、戸籍情報との紐付け方法においての懸念において、マイナンバー制度を活用する事はむしろデジタル化、主に公的手続きのデジタル化に寄与し、公的機関の業務簡便化を図る上で効果が見込めるのではないか?

色々とお騒がせのあるマイナンバー制度ではあるが、折角の有益な制度を十二分に活用する事は、「社会生活上の姓」の公的な証明や戸籍情報との紐付けにおいて、デジタル化を推進し、公的手続きの効率化に貢献する可能性が大いにあり得るのではないか?

その様な自己疑問に対し、自己対話による回答を導き出してみよう。


マイナンバー制度活用のメリットとしては、まずは本人確認の簡素化、各人のマイナンバーカードに「社会生活上の姓」を記録し、ICチップに戸籍情報との紐付け情報を格納する事で、各種手続きにおける本人確認を簡素化できると思われる。

これにより、窓口での書類提出や目視確認の負担を軽減し、手続き時間の短縮が図れる。

そして情報連携の円滑化、マイナンバー制度を活用する事で、公的機関間での情報連携が円滑になり、各種手続きにおける情報照会や確認作業を効率化できる。

これにより、公的機関の業務負担を軽減し、行政サービスの向上に寄与するものと期待する。

オンライン手続きの推進、マイナンバーカードとICチップを活用する事で、オンラインでの各種手続きが可能になり、国民の利便性を向上させることが可能となる。

これにより、窓口に行く必要がなくなり、時間や場所にとらわれずに手続きを行う事ができる。

セキュリティの強化も大切だ。

マイナンバー制度は、現時点において高度なセキュリティ対策が施されており、個人情報の保護に貢献している。

ICチップに格納された情報は、暗号化されており、不正アクセスや情報漏洩のリスクを低減できる。


…と、ここまでは利便点を述べたが、マイナンバー制度活用の懸念点と対策も同時に考えてみよう。

マイナンバー制度は、個人情報を集約する為、情報漏洩のリスクが懸念される事は否めない。

対策として、厳格なセキュリティ対策の実施、情報管理体制の強化、不正アクセス監視体制の構築などが求められる。

また、マイナンバー制度は、個人情報の利用範囲が広い為、プライバシー侵害のリスクが懸念される。

対策としては、利用目的の明確化、利用範囲の限定、情報公開の透明性確保などを求めたい。

マイナンバー制度の導入には、国民の理解と信頼が不可欠であり、対策として、丁寧な情報提供、制度の透明性確保、国民の意見反映などが求められる。

マイナンバー制度を活用する事で、「社会生活上の姓」の公的な証明や戸籍情報との紐付けを効率的に行う事ができ、公的手続きのデジタル化を推進する上で大きな効果が期待できると思われる。

既存のマイナンバー制度を活用した「戸籍上の姓」「社会生活上の姓」の運用は、今後のデジタル化社会に大いに寄与するものとして大いに期待し得るが、ここで参考として、公的機関の完全デジタル化を推進しているエストニアでは、この個人情報の運用について、どのような工夫が施されているのかを簡単に調べてみた。


エストニアは、世界でも先進的なデジタル国家として知られており、国民IDカードを中心とした徹底的なデジタル化を推進している。

個人情報の運用においても、日本とは異なる独自の工夫が施されている。

エストニアの個人情報運用における主な特徴は以下の通り。

国民IDカードの広範な利用:

エストニアでは、国民IDカードがほぼ全ての国民に普及しており、行政手続きだけでなく、銀行取引、電子署名、電子投票など、幅広い場面で利用されている。

国民IDは、日本におけるマイナンバーとは異なり、公開情報として扱われる傾向がある。

X-Roadによるデータ連携:

X-Roadと呼ばれる安全なデータ交換プラットフォームを通じて、政府機関や民間企業間でデータ連携が行われている。

これにより、国民は一度情報を登録すれば、様々なサービスをオンラインで利用できる様になり、行政手続きの効率化が図られている。

国民は、自身のデータへのアクセスログを確認する事ができ、誰が自分の情報にアクセスしたかを把握できる。

これにより、データの透明性が確保され、国民は自身の情報を管理する事ができる。

電子政府サービスの充実:

エストニアでは、ほぼ全ての行政サービスがオンラインで利用可能であり、国民は時間や場所に捉われずに手続きを行うことができ得る。

電子納税申告システム「e-Tax」をはじめ、様々な電子政府サービスが提供されている。

エストニアの事例は、個人情報の安全性を確保しつつ、デジタル後進国である日本において、強力にデジタル社会を推進する為の参考になるものであろう。

エストニアの個人情報運用における工夫は、以下の点で参考になる。

国民IDの積極的な活用:

日本でも、マイナンバーカードの利用範囲を拡大することで、行政手続きの効率化や国民の利便性向上につながる可能性がある。

データ連携の仕組み:

エストニアのX-Roadのような安全なデータ連携の仕組みを導入する事で、公的機関間の情報連携を円滑化し、行政サービスの向上を図ることができ得る。

データの透明性確保:

国民が自身のデータへのアクセスログを確認できる仕組みを導入する事で、個人情報の保護と利用の透明性を高める事ができる。

但し、エストニアと日本では、社会制度や国民の意識が異なる為、エストニアの事例をそのまま適用することは難しいと考えられ、更に日本においては、国民のプライバシー保護に対する意識が高い為、国民感情に配慮しつつ、日本の社会制度や文化に合った制度設計が求められる。

では、エストニアの高度な情報セキュリティ技術を、日本のマイナンバー制度に転用する事は可能だろうか?


エストニアの情報セキュリティ技術の主な特徴は、以下の通り。

X-Road:

これは、分散型データベース間の安全なデータ交換を可能にする技術であり、政府機関や民間企業間で効率的かつ安全なデータ連携が実現されている。

ブロックチェーン技術の活用:

エストニアでは、一部の行政サービスにおいてブロックチェーン技術が活用されており、データの改ざん防止や透明性確保に貢献している。

電子署名と電子認証:

国民IDカードに搭載された電子署名と電子認証機能により、オンラインでの本人確認や契約締結が安全に行える。


これらの技術は、日本のマイナンバー制度にも応用できる可能性があるものと考える。

ただし、転用する上での考慮事項はあり、エストニアと日本では、行政制度や国民の意識が異なる為、技術をそのまま転用する事は困難であると思われる。日本の制度や文化に合わせたカスタマイズが必要である事は言うまでもない。

エストニアでは、国民IDの利用範囲が広い一方で、日本ではプライバシー保護に対する意識が高い為、データ利用範囲やアクセス制御について慎重な検討が必要だろう。

そして、マイナンバー制度の安全性や利便性について、国民の理解と信頼を得る事が重要であり、その為には、透明性の高い情報公開や丁寧な説明が求められる。

X-Roadのようなデータ連携基盤の構築や、ブロックチェーン技術の導入には、高度な技術力と専門知識は必要ではある。

X-Roadのような技術を導入する事で、マイナンバー制度における情報連携をより安全かつ効率的に行うことができると思われる。

ブロックチェーン技術や高度な電子署名・電子認証技術を活用する事で、マイナンバー制度のセキュリティを強化できると思われる。

マイナンバーカードを活用したオンラインサービスの拡充により、国民の利便性を向上させる事が出来るだろう。

エストニアの高度な情報セキュリティ技術は、日本のマイナンバー制度の安全性と利便性を向上させる上で、大いに参考になり得るものであるが、しかしながら、技術の転用には慎重な検討と国民の理解が不可欠であろう。

デジタル社会に深化している現代の若年世代において、X-Roadのような技術と理念は一定の理解と賛同を得られる可能性は否定しない。

デジタル社会に深く根ざした現代の若年世代にとって、X-Roadのような技術と理念は、以下のような理由から理解と賛同を得やすいと思われる。


デジタルネイティブとも呼ばれる若年世代は、生まれた時からインターネットやスマートフォンなどのデジタル技術に囲まれて育っており、デジタルツールを使いこなす事に関して抵抗はない。更にオンラインショッピング、SNS、動画配信サービスなど、日常生活の多くの場面でデジタルサービスを利用しており、まさにデジタル技術の利便性を実感していると言える。

デジタル情報の取捨選択や真偽の判断など、情報リテラシーが高い傾向があり、デジタル技術の安全性やリスクについても一定の理解があるという優位性も捨てがたい。

若年世代は、情報の共有やオープンなコミュニケーションを重視する傾向があり、X-Roadのようなデータ連携の仕組みに共感しやすいと考えられ、また、個人情報の保護やデータの透明性に対する意識が高く、X-Roadのデータアクセス制御やセキュリティ機能に安心感を覚える可能性がある。そして、時間や場所にとらわれない効率的なサービスを求める傾向があり、X-Roadによるオンライン手続きの簡便さに魅力を感じる可能性もあると思われる。

若年世代は、今後のデジタル社会を担う世代であり、デジタル技術の発展や普及に大きな影響力を持っている事は広く認容しなければならない。

若年世代のデジタルに対する理解と賛同は、日本のデジタル化を推進する上で重要な原動力となり、若年世代の意見やアイデアは、デジタル社会の制度設計やサービス開発に貴重な示唆を与えるだろう。

その為には、X-Roadのような技術や理念について、分かりやすく説明する情報提供が重要である。

推進・加速を促すために、若年世代がデジタル社会について意見交換できる場を設け、積極的に意見を聴取することが重要である。よって、若年世代がデジタル社会の制度設計やサービス開発に参画できる機会を提供することも重要である。

若年世代のデジタルに対する親和性と、X-Roadの理念との親和性を考慮すると、若年世代は日本のデジタル化を推進する上で重要な役割を担うと考えられる。


以上を鑑みうると、「選択的夫婦別姓制度」を、アナログ的思考で捉える事はもはや失笑を伴うものであり、多様化社会を標榜するのであれば、この様な多種多様な先端技術と複層的な思考を以て、制度の効果的な形成および熟成運用を期待したい。


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